「よろしかったでしょうか?」はNG! 飲食店スタッフが知っておきたい間違った敬語
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間違った敬語①「~でよろしかったですか/~でよろしかったでしょうか?」
「紅茶をください」
「ミルクとお砂糖はおつけしてよろしかったでしょうか?」
「~でよろしかったですか/~でよろしかったでしょうか」は「かった」という「過去」を表す言葉を含んでいます。しかし、「ミルクとお砂糖」はこれから提供するので「未来」のことです。時間がちぐはぐになってしまうため、「~でよろしかったですか/~でよろしかったでしょうか?」と尋ねるのは間違っています。「よろしいですか」を使い、「ミルクとお砂糖はおつけしてよろしいですか?」というのが正しいでしょう。
また、人数を確認する際に「3名さまでよろしかったでしょうか?」と聞くのも間違いです。今、3名のお客さまが目の前にいらっしゃるのに、「~でよろし『かった』でしょうか」と過去形で確認するのはおかしなこと。「いらっしゃいませ。3名さまでよろしいでしょうか?」と尋ねましょう。
間違った敬語②「~円からお預かりします」
「1,000円からお預かりいたします」
「~から」は、「~から~まで」というように、一定の距離や幅を表す場合の出発点として使う言葉です。「1,000円からお預かりいたします」の場合は、「1,000円のうちから一部の金額を預かる」という意味になります。しかし、受け取ったのは1,000円そのものであり、一部ではないために間違い。「1,000円、お預かりします」が正しい表現です。
ちなみに、お客さまにお金をぴったり支払ってもらった場合は、いただいた金額を全て受け取ることになり、お釣りを返すわけではないので「お預かりします」という表現が間違いに。「ちょうど頂戴いたします」と言って受け取りましょう。
間違った敬語③「どちらにいたしますか?」
「……お肉をください」
お肉料理とお魚料理のほかにも、ワインの赤と白、紅茶とコーヒーなど、いずれかを選んでもらう場面で「どちらにいたしますか?」はよく聞く言葉です。しかし、これも間違っています。
「いたす」は「する」の謙譲語。つまり、自分が主語の場合に使います。メニューを選ぶのはお客さまなので、「する」を尊敬語にして、「なさる」を使うのが正しい敬語。「お肉料理とお魚料理、どちらになさいますか」と尋ねましょう。
間違った敬語④「~のお客さま」
「あ、はい」
スタッフがお客さまのテーブルで、「オムライスのお客さま?」と問いかけている場面はよく見かけます。「オムライスを頼んだ人は?」「オムライスは誰のですか?」などの言葉を丁寧にしたつもりかもしれませんが、これは間違い。
正しくは「お待たせいたしました。オムライスでございます」です。どのお客さまに提供するかを確認する必要がある場合は、「オムライスをご注文のお客さま?」と聞いてみましょう。
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間違った敬語⑤「とんでもございません」
「とんでもございません」
「ありがとうございます」 「とんでもございません」 使用済みの取り皿をスッと交換するなど、さりげない気遣いができたときにお客さまから「ありがとう」「すみません」といった言葉をいただくことがあります。それに対して、恐縮した気持ちを伝えようとして「とんでもございません」が使う人がいます。
「とんでもない」は、途方も無い・意外という意味を持ちます。「とんでも+ない」という成り立ちではなく、「とんでもない」で一つの言葉です。そのため、「とんでも『ない』」の『ない』だけを「ございません」と丁寧にするのは間違っています。「とんでもないことです」または「恐れ入ります」と返しましょう。
ただ、「とんでもございません」はすでに社会に受け入れられていて、文化庁も現代社会での使用は問題ないという指針を出しています。無理のない程度に「とんでもないことです」や「恐れ入ります」を取り入れていきましょう。
<参考> 文化庁 敬語の指針
間違った敬語⑥「お待ちいただく形になります」
「4人です。空いていますか?」
「ただ今満席でございます。お待ちいただく形になります」
「お客さまに対して『お待ちください』という直接的な言葉では失礼なのでは?」という思いから、どうにか言葉をやわらげようと、こうした言い方をする人が多いようです。しかしこれは、お待ちいただくことになる、という形のない状況のことを「形」と言っているため、おかしな表現。
言葉を正すとともに、「具体的な数字」をお伝えすることで誠意を表しましょう。「ただ今満席でございます。30分ほどお待ちいただきます。よろしいでしょうか」と聞くのが望ましいです。30分という具体的な数字を聞くことで、お客さまは判断がしやすくなります。冒頭に「大変申し訳ございません」と謝罪の言葉をプラスしてもよいでしょう。
実際の接客場面では、咄嗟の判断や受け答えが求められるため、ついついクセになっている言葉遣いが出てしまうかもしれません。しかし、正しい敬語が使えれば、どんなお客さまにも自信をもって接客できます。まずはよく使うフレーズから見直してみてはいかがでしょうか。
飲食店の間違いやすい敬語 よくある質問
「~でよろしかったでしょうか?」という言い方はなぜ間違いなのですか?
「よろしかった」は過去形ですが、お客様に確認している内容は現在の事柄なので、時制が合っていません。この場合は現在形の「よろしいですか?」を使い、「~でよろしいでしょうか?」と尋ねるのが正しい表現です。
会計時に「1,000円からお預かりします」と言うのはなぜダメなのですか?
「~から」は「一部を」という意味合いを持つため、「1,000円の一部を預かる」という意味になってしまいます。1,000円札そのものを受け取ったので、「1,000円、お預かりします」が正しい言い方です。
お客様にメニューを選んでもらう時、「どちらにいたしますか?」は正しい敬語ですか?
いいえ、間違いです。「いたす」は自分(店側)の行動に使う謙譲語です。選ぶのはお客様なので、尊敬語の「なさる」を使い、「どちらになさいますか?」と尋ねるのが正解です。
料理を運んだ際、「オムライスのお客様?」と聞くのは失礼にあたりますか?
はい、商品を主語にして「オムライスでございます」と伝えるのが基本です。誰に提供するか確認したい場合は、人をモノのように呼ぶのではなく、「オムライスをご注文のお客様?」と尋ねるのが丁寧な言い方です。
お客様に感謝された時、「とんでもございません」と返すのは間違いですか?
厳密には間違いです。「とんでもない」で一つの言葉なので、「ない」だけを「ございません」に変えるのは文法的に正しくありません。正しくは「とんでもないことです」や「恐れ入ります」です。ただし、近年は社会的に広く使われているため、文化庁は使用を容認する見解も示しています。
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