しょくヨミ!! 飲食店の正社員/アルバイト求人情報サイト [更新:12月5日 18:08]

  1. トップ
  2. しょくヨミ!!
  3. 話題の食ニュース
  4. 季節イベント
  5. いちご勢力図に変化の兆し? 2025年のいちご市場を振り返る
飲食店で働く人向けのWebマガジン しょくヨミ!!
初回公開日: 最終更新日:

いちご勢力図に変化の兆し? 2025年のいちご市場を振り返る

"いちごは、季節感がある、手に入りやすい、手間をかけずに提供できる、万人受けするといった理由で、旬の時期は飲食店でも重宝する食材です。また、地域、品種、出回り時期によって味わいが変化する面白さもあります。 2025年のシーズンが終わり、振り返ってみると、埼玉の新たな品種が注目を集めたり、福岡の「あまおう」が物流問題の影響を受けていたりと、変化の兆しが見られます。 来シーズンに向けて、今年の動き・変化などをまとめました。
画像素材:PIXTA

高級ブランドいちご「あまおう」の近況

高級ブランドいちごといえば、福岡の「あまおう」ですが、前シーズンは、天候不順や流通コスト増加により、首都圏へ配送する際のコスト・時間・品質維持のハードルが高くなり、供給が不安定な状態になりました。

また、これまで「あまおう」は育成者権により、福岡県でのみ栽培が認められていたため付加価値が保たれてきましたが、2025年1月に育成者権が失効。「あまおう」というブランド名は商標登録で守られていますし、県とJAでさまざまな対策をとっていますが、事実上、他県でも同じ苗で生産が可能になりました。別ブランドとして、同じ品種が出回ることが懸念されています。加えて生産者の高齢化と栽培面積の減少も課題となっており、他県で新ブランドが次々登場している中、「あまおう」の地位維持には新技術導入や新規就農者の育成などが急務とされています。

「とちおとめ」で知られる栃木県は収量UPで市場拡大

半世紀以上にわたりいちごの生産量全国トップを誇るのが栃木県。生産量は58年連続1位を守っています。

主力ブランドとして「とちおとめ」が有名ですが、近年は、生産効率がよい、大玉、長距離輸送に強いといった特長を持つ新品種「とちあいか」の栽培面積を増やしており、関西市場をはじめ県外への安定供給を実現しています。さらに販路拡大にも注力した結果、販売額は2025年産シーズンも過去最高を更新しました。

埼玉県の新品種「あまりん」が全国いちご選手権で最高金賞

福岡や栃木のようないちご生産地のイメージはない埼玉県ですが、同県が開発したいちご新品種「あまりん」が、全国いちご選手権で3年連続最高金賞を受賞し、注目を集めています。「あまりん」は糖度20度前後と非常に高く、濃厚な甘みと香り、果汁感が魅力の品種です。

2000年頃から観光農園や直売所のいちご農園が増えた埼玉県では、「観光農園のメインに位置づけられる、埼玉のオリジナル品種がほしい」との生産者の要望を受け、埼玉県農業技術センターで新品種の開発に着手しました。8年かけて約500通りの交配を行い、試行錯誤の末に「あまりん」が誕生。販売店では即座に完売するほどの人気です。また、次世代品種「べにたま」も登場し、今後の展開にも期待が寄せられています。

いちご市場では近年、「とちおとめ」の手ごろさと「とちあいか」の安定供給力、さらに「あまおう」の高級イメージといった三者が競い合っていましたが、この勢力図に変化が起きるかもしれません。

いちごの価格は上昇傾向

福岡産いちごの首都圏供給減少は、同県にとって大きな課題です。その隙間に、栃木は流通・販売面に力を入れ、埼玉は新品種の引力で市場に入り込んでおり、各県がしのぎを削っています。そんな中、いちごの値段は高騰が続いています。主な要因として、天候不良による収穫量の減少、輸送コストの上昇、人手不足による作業コスト増加などがあげられます。2020年頃を境に上昇し、今ではスーパーの1パック値段は数年前のほぼ倍になり、ブランドいちごは1,000円を超えることも。これらの要因を踏まえると、今後すぐに価格が下がることは難しく、来年度も同程度の価格が予想されます。

日本産いちごの輸出が進む

日本産いちごの品質は海外からも高く評価されており、香港、台湾を中心に海外に輸出されています。昨年12月にはフィリピン向け輸出が正式に解禁されました。 こうした流れを受け、熊本県が高品質ないちごの輸出プロジェクトを開始するなど、輸出を見据えて品種改良を進める生産地も出てきました。日本産のいちごの改良が進むことも、今後いちご勢力図に影響を与えるかもしれません。

飲食店が利益を増やすには、利益率を上げるために原価率を下げることが欠かせません。いちごをはじめ、果物の仕入れ先は複数確保しておくのがおすすめ。季節感あるメニューを積極的に取り入れ、お客さまに楽しんでいただきましょう。

2025年いちご市場の動向 よくある質問

Q.

2025年のいちご市場で、特に注目すべき変化は何でしたか?

A.

これまで高級ブランドとして知られた福岡の「あまおう」の供給が不安定になる一方、栃木の新品種「とちあいか」が安定供給でシェアを伸ばし、さらに埼玉の新品種「あまりん」が全国いちご選手権で最高金賞を受賞し、人気が急上昇した点が大きな変化です。

Q.

高級いちご「あまおう」が、今後どうなると懸念されていますか?

A.

2025年1月に育成者権(品種を守る権利)が失効したため、福岡県以外でも同じ品種の栽培が可能になりました。「あまおう」という名前は使えませんが、同じ品質のいちごが別ブランドで安く出回る可能性があり、ブランド価値の維持が課題とされています。

Q.

最近、特に注目を集めている新品種は何ですか?

A.

埼玉県の「あまりん」です。全国いちご選手権で3年連続最高金賞を受賞した品種で、糖度が20度前後と非常に高く、濃厚な甘みが特徴です。人気が高く、販売店では即完売することもあります。

Q.

いちごの価格が高騰しているのはなぜですか?来年も続きますか?

A.

2023年の猛暑などの天候不順による収穫量の減少、輸送コストの上昇、人手不足などが主な原因です。これらの要因から、価格はすぐには下がりにくいと見られており、来年度も高値が続くと予想されています。

Q.

飲食店として、いちごの仕入れで気をつけるべきことは何ですか?

A.

価格高騰や供給不安定のリスクに備え、特定の産地や品種に頼るのではなく、複数の仕入れ先を確保しておくことが重要です。また、各産地の新品種開発や輸出動向にも注目し、お店のメニューに合ったいちごを安定的に仕入れられる体制を整えましょう。

  • この記事の著者
    著者画像

    若松真美

    ライター

    神奈川県在住ライター。女性向けライフスタイル、インバウンド、国内旅行、食などの分野で執筆や編集を経験。週末は東京下町や鎌倉などで飲み歩く。特に和食とエスニックが好き。