しょくヨミ!! 飲食店の正社員/アルバイト求人情報サイト [更新:12月26日 18:43]

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飲食店で働く人向けのWebマガジン しょくヨミ!!

2016/6/1

飲食店に強い個性が求められる時代。メニュー開発に必要な技術とは?

飲食店により強い個性が求められるようになった今。繁盛店になるためには、独自性のあるメニューが必要不可欠といえます。

そこで大切になってくるのがメニュー開発。店の“売り”になるような魅力あふれる一皿を生み出せれば、ブランド力を高めることができ、かつ集客面にも絶大な効果が得られます。数多ある競合店の中から一歩抜け出すためにも、最も力を入れるべき作業といえるのではないでしょうか。

今回はそんなメニュー開発について詳しく紹介。料理人の方はぜひ参考にしてみてください。

旨いだけではダメ。美味しさの本質って?

メニュー開発をするうえで大切なのは、“美味しさ”の本質を理解したうえで作業に取り組むこと。人間の味覚はとても曖昧なものです。環境や体調によって“美味しさ”は変化することをまずは知っておかなければなりません。

たとえば暑い夏の日に飲む生ビールや、寒い日の鍋料理は格別な味わいを楽しめます。環境や事前期待によって美味しさが変わる一例といえるでしょう。

では客に“美味しさ”を与えるにはどのような演出が必要なのか。例をいくつか紹介します。

・季節感…季節に合わせた旬の食材は、味に優れていると同時に、料理の期待感を高める効果を得られます。
・素材感…素材の姿かたちをそのまま生かすことで、華やかな見た目に仕上げることができ、また客の印象にも残りやすくなります。
・ヘルシー感…健康志向が高まる今、ヘルシーであることは美味しさを表現するひとつの手法といえます。
・産地・鮮度…ブランド牛やブランド野菜を用いた料理は、その産地をメニュー表に記載しておけば客の期待感を煽ることができます。

そのほか店内の雰囲気なども“美味しさ”への期待感を高めるのにひと役買います。たとえば目黒の老舗とんかつ店『とんき』。こちらの店は、カリッと揚げられた絶品とんかつ、そして巨大なコの字型カウンターでテキパキと働く職人の姿が印象的ですが、まるで舞台を観劇しているかのような独特の雰囲気は、客の期待感を大いに煽り、供されるとんかつにさらなる魅力を加えています。“美味しさ”は味の良さに加え、環境や演出によってもたらせることを教えてくれる店といえるでしょう。

客の記憶に残るのは、五感を刺激するメニュー

さて、上では環境によって“美味しさ”が変わることを説明しました。ここからは実際にメニュー開発をするうえで、どのような表現手法が必要になるのか、料理別に紹介していきます。

・味(味覚)…基本はその料理に求められる味を貫く。味のメリハリを意識する
・見た目(視覚)…インパクトある大きさ、鮮やかな色合いで客の目を引く
・匂い(嗅覚)…香りを強く出すことで印象に残す。匂いは記憶に残りやすい
・食感(触覚)…食べたときのハッキリとした食感を意識する
・音(聴覚)…鉄板や石焼の音、氷の音などで演出を加える

続いて、客の印象に残りやすい味つけや表現手法の例を料理ごとに挙げていきます。

・麺料理…こってり、あっさり、懐かしい味、ツルツル、熱々
・とんかつ…パン粉の立ち方、ジューシー、肉の厚さ、揚げ色
・寿司…とろける、鮮度、脂の乗り具合、産地、高い値段
・焼き鳥…きれいな焼き色、香り、産地、ジューシー、合わせるドリンク
・肉料理…香り、鉄板からの音、肉の厚さ、焼き色
・コーヒー…芳醇な香り、豆のブレンド、落とし方、店の雰囲気

名シェフのメニュー開発を知る

最後に、代々木にあるイタリア料理店『Ostu』のメニュー開発にまつわる話を紹介しましょう。

『Ostu』で腕をふるうのは、イタリアの一ツ星店『ロカンダ・ネル・ボルゴ・アンティーコ』で修行を重ねた宮根正人シェフ。彼のこだわりはピエモンテ州の郷土料理を日本で再現すること。それを象徴するメニューが「フィナンツェーラ」と呼ばれる料理です。

この料理には、鶏のとさかや豚の睾丸といった珍しい食材を用います。しかし、日本ではなかなか安定供給先が見つからない。宮根シェフは、一度は店で提供することを諦めかけたようですが、“ピエモンテ州を象徴するこの料理をメニュー表から外すことはできない、なんとか提供を続けられないか”と食材探しに奔走します。そして、苦労のすえ安定供給先をみつけ、現在ではイタリア人をも感嘆させる看板料理として『Ostu』には欠かせないメニューになっているそうです。

一般的にメインに据える料理には「分かりやすさ」が求められます。変わった料理や珍しい料理では、対象客が限定されてしまうからです。しかし宮根シェフは“自分の店にはこの味が絶対に必要”だと、「フィナンツェーラ」を提供することにこだわった。この信念を貫く勇気こそが、店の個性を生み出す力となり、それがまた客の心を掴む大きなきっかけとなる。メニュー開発に取り組む方は、上で挙げた正攻法を交えつつも、料理人として根底にある信念や熱意に懸けてみるのも、成功の秘訣といえそうですね。

今回はメニュー開発の秘訣について紹介しました。求人@飲食店.COMでは、メニュー開発を学べるお仕事をたくさんご紹介しています。メニュー開発を学べる飲食店の求人一覧よりぜひご覧ください。

■参考
翔泳社『自分でパパッとできる はじめての飲食店開業&経営』