飲食店従事者の「働き方改革」は転職から？ 大手企業の制度を知って自分に合った職場を探そう

個人店と大手企業では、働き方にどのような違いがあるのでしょうか。その根底にあるのは、組織の規模と仕組みです。

大手飲食店・飲食企業の多くは、コンプライアンス（法令遵守）を重視した労務管理を行っています。例えば、1分単位での労働時間の管理や、十分な人員を確保し、ITシステムを活用した高度なシフト管理を行うなど、従業員一人ひとりの負担を軽減し、計画的な休暇取得を可能にしている企業が増えています。

実際に、ファミリーレストランを展開するすかいらーくホールディングスでは、年に2回、7連休を取得できる制度や、個人の事情に合わせて勤務時間を調整できる時短勤務制度を導入しています。また、牛丼チェーンなどを展開するゼンショーホールディングスでも、夏期・冬期にまとまった休暇を取得できる制度があり、飲食業界の労働環境改善に取り組んでいます。

こうした制度が実現できるのは、大手企業ならではの資本力と組織力があるからです。従業員の働きやすい環境を整えることが、結果的にサービスの質の向上と企業の成長につながるという考え方が浸透しているのです。

転職を考える際、給与の額面に目が行きがちですが、本当に豊かな生活を送るためには「福利厚生」の充実度が非常に重要です。福利厚生は、給与のように直接現金で支給されるもの以外で、企業が従業員やその家族の生活をサポートするために提供する報酬やサービスを指します。

まずは押さえたい、基本的な福利厚生一覧

安心して働くための土台となる、基本的な福利厚生について確認しておきましょう。これらが整備されていない場合、注意が必要です。

「社保完備（社会保険完備）」とは？

求人票でよく見る「社保完備」とは、健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険の4つの社会保険に加入できることを意味します。個人店では未加入のケースも見られますが、大手企業では加入が徹底されています。

通勤交通費、時間外手当（残業代）の支給ルール

自宅から勤務地までの交通費が規定に沿って支給されること、また、所定の労働時間を超えて働いた場合に時間外手当（残業代）がきちんと支払われることは、基本的な権利です。特に残業代については、1分単位で計算・支給するなど、明確なルールを設けている企業は信頼性が高いと言えるでしょう。

生活を直接サポートする「手当」や制度

日々の生活の負担を軽減し、暮らしにゆとりをもたらしてくれるのが各種手当です。企業の特色が出やすい部分でもあります。

家賃や家族をサポートしてくれる「手当」

代表的なものに、家賃の一部を補助する「住宅手当」や、配偶者や子供の人数に応じて支給される「家族手当（扶養手当）」があります。これらの手当は、毎月の固定費を直接的に助けてくれるため、可処分所得を増やしてくれます。また、店長などの役職者には、その責任の重さに応じて「役職手当」が支給されます。

飲食企業ならではのユニークな制度がある会社も

飲食店で働く魅力の一つが、食事に関する補助です。勤務日の食事を無料で提供したり、割安な価格で食べられたりする「食事補助（まかない）」制度は、日々の食費を節約できる嬉しい福利厚生です。大手飲食店の場合は更に、自社グループの店舗を割引価格で利用できる「社員割引」制度を広く利用できる場合があり、プライベートで外食を楽しむ際に役立ちます。

将来の安心につながる、さまざまな制度

目先の生活だけでなく、長期的な視点であなたの人生を支えてくれる制度も、大手企業ならではの魅力です。

退職金制度（確定拠出年金など）

長年勤務した従業員の功労に報いるために、退職時にまとまった金額が支払われる制度です。近年では、企業が掛金を拠出し、従業員自身が運用方法を選んで将来の年金を形成する「確定拠出年金（iDeCoや企業型DC）」を導入する企業も増えています。

財形貯蓄制度

給与から天引きする形で、従業員が計画的に貯蓄を行うことを会社が支援する制度です。自分で銀行に行く手間を省きつつ、着実に資産形成を進めることができます。

資格取得支援制度

調理師免許やソムリエ、食品衛生責任者といった業務に関連する資格の取得を支援する制度です。受験費用を補助したり、合格した際にお祝い金を支給したりすることで、従業員のスキルアップを後押しします。

「飲食業界は休みが取れない」というイメージは、過去のものとなりつつあります。特に大手企業では、法律の遵守はもちろんのこと、従業員の心身の健康を保ち、生産性を高めるために休暇制度の整備に力を入れています。

大手企業における有給休暇のリアルな取得率

2019年の法改正により、企業は年に10日以上の有給休暇が付与される従業員に対し、年5日の有給休暇を取得させることが義務化されました。これを受けて、大手企業では有給休暇の取得が当たり前の文化として根付いてきています。会社が計画的に取得日を指定する「計画年休制度」を導入したり、管理職が部下の取得状況を管理したりと、確実に休暇が取れるような仕組みづくりが進んでいます。

厚生労働省が毎年発表している令和6年の「就労条件総合調査」によると、現在の国内有給取得率は、65.3％と過去最高を記録しました。飲食業界単体でも51.0％と、前年の49%から改善されています。

参照元：厚生労働省「就労条件総合調査：結果の概要」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/11-23c.html

夏休み・正月休みだけじゃない「休暇制度」を採用する企業も

勤法定の有給休暇とは別に、企業が独自に設ける休暇制度も増えています。例えば、勤続年数に応じて数日間の連続休暇が取得できる「リフレッシュ休暇」や、本人や家族の誕生日に休める「アニバーサリー休暇」などです。 また、結婚や出産、育児、介護といったライフステージの変化に柔軟に対応できる制度も重要です。産前産後休業や育児休業の取得実績はもちろん、子供が小さいうちは勤務時間を短縮できる「時短勤務制度」などが整備されている企業は、従業員が長期的にキャリアを築ける環境と言えるでしょう。

「ホワイト企業」と一口に言っても、その背景にある企業哲学や文化は様々です。 ここでは、より詳細な調査に基づき、休日や福利厚生といった制度面はもちろん、「なぜその企業が働きやすい環境を実現できているのか」という本質的な部分まで掘り下げて5社ご紹介します。 あなた自身の価値観と照らし合わせながら、理想の職場を見つけるヒントにしてください。 ※本項のデータや分析は、公開されている調査レポートや各社の公式情報に基づいています。最新情報は必ず採用サイト等でご確認ください。

1. 低水準の残業時間：株式会社アレフ（びっくりドンキー）

年間休日116日＋年2回の5連休推進など、クリーンな労務管理を徹底。借上社宅やGLTD（団体長期障害所得補償保険）など長期安心を支える制度も。
参考： https://www.aleph-inc.co.jp/company/normalization/

2. 驚異の社員定着率：スターバックス コーヒー ジャパン 株式会社

従業員を「パートナー」と呼び、誇りと成長を支える文化が高定着率に直結。多様なキャリアパスと育休後の高い復職率が強み。
参考： https://www.starbucks.co.jp/recruit/

3. 年に二回の長期連休：株式会社物語コーポレーション（焼肉きんぐ 等）

「ダブルレインボー休暇（7連休×年2回）」など、人生経験への投資を重視。社員寮や高水準の給与で生活基盤も支援。
参考： https://recruit.monogatari.co.jp

4. ライフステージで転勤の有無を変更：株式会社サイゼリヤ

転勤有無で選べるキャリア（グローバル社員／リージョナル社員）。最長で子ども小6までの時短勤務や高い男性育休取得率も特徴。
参考： https://www.saizeriya.co.jp/corporate/recruitment-information/

5. 手厚い補助と、世界への挑戦：株式会社トリドールホールディングス（丸亀製麺）

年2回の7連休、家賃60%会社負担の借上社宅など先進的取り組み。海外赴任などグローバルに挑戦できる機会も豊富。
参考： https://www.toridoll.com/recruit/index.html

魅力的な制度が多数あっても、それが実際に機能していなければ意味がありません。求人情報や口コミから、本当に働きやすい企業を見抜く視点を解説します。

飲食業界における「ホワイト企業」の定義

休日数、残業時間、離職率、研修制度の4軸でチェック。
・休日は月8日以上／年間休日105日以上
・残業は月20〜30時間以下が目安。みなし残業超過分は支給されること
・離職率は低いほど定着率の高さを示す
・入社後研修やキャリア支援制度の具体性

求人票を見るとき必ずチェックすべき6つのポイント

休日

「完全週休2日制」と「週休2日制」の違いに注意。年間休日数の明記も必須。

給与

固定残業（みなし残業）の有無・時間・金額・超過分の支給可否を確認。

福利厚生

住宅手当・家族手当・退職金など、制度名が具体的かをチェック。

キャリアパス

店長以降のキャリア、研修の中身が具体的か。

抽象的な言葉には要注意！

「アットホーム」「風通し」などは裏づけ制度の有無で判断。