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2024-03-08 17:42:47.0

「SNSで内部告発」はNG?従業員が自分の身を守れる、適切な告発手段とは

2024年2月、飲食チェーンフランチャイズ店の元従業員が、店内が不衛生だとする内部告発をSNS上にアップしたとして威力業務妨害の疑いで逮捕・送検されました。今回の件では、元従業員が告発内容に虚偽が含まれていたことを認めていますが、ネット上で「仮に告発内容が事実でも、SNS上で内部告発を行うと逮捕されるのか」という議論が起こるきっかけとなりました。誰もが自由に発信できるSNSは内部告発の手軽な手段になり得ますが、使い方次第では通報者が不利な立場に立たされる可能性も。万が一不正を見つけてしまったときのために、適切な対応を知っておきましょう。
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適切な内部告発の方法「公益通報」

そもそも内部告発は、組織の自浄作用を促し企業が信頼を取り戻すための重要な要素でもあります。そのため国は「公益通報者保護法」という法律を制定し、適切な通報を行う人の権利を保護しています。ただし、保護の対象となるには通報が「公益通報」の要件(対象者・告発内容・通報先)を満たしていなければなりません。

■公益通報を行える対象者

公益通報を行えるのは、不正があった事業者で働いている人、または1年以内に働いていた人に限られます。

・労働者(パートタイム、アルバイト、派遣社員、公務員を含む)
・退職後1年以内の労働者
・取引先事業者(請負契約の相手方事業者、継続的な物品納入や清掃などの役務契約者など)
・役員(取締役、監査役など)

■公益通報となる告発内容

公益通報となる内容は、通報する者が働いていた「役務提供先」に関することで、国民の生命、体、財産、その他の利益の保護に関わる「対象法律」に要件根拠がある「通報対象事実」の範囲内となります。

例えば飲食店で働く人では、以下のようなケースが考えられます。

・半年前に働いていたレストランで、店長が売上を横領しているのを見てしまった(「刑法」違反)
・アルバイトとして働いているケーキショップで、不適格な輸入果物を使った食品を販売していることを知ってしまった(「食品衛生法」の違反)
・役員を務める企業で残業代の未払いを隠蔽していることを知ってしまった(「労基法」違反)
・いつも出前を届けているバーで、暴行・脅迫の現場を見てしまった(「刑法」違反)

■公益通報となる通報先

公益通報と見なされるのは、以下の3つのいずれかへ通報した場合に限られます。

・不正を見つけた事業者の「内部通報窓口」
・行政指導を行う「権限のある行政機関」
・社会的な意義を持つ「事業者外部機関」(マスコミ、消費者団体、事業者団体、労働組合など)
※競合企業への持ち込みは、競争地位など正当な利益を害する恐れがあるため除く

■公益通報の対象にならない代表的なケース

上記のように公益通報の対象は法で定められており、以下のケースは「対象外」となります。

・パワーハラスメントやセクシャルハラスメント
・私生活上の法令違反行為
・「公益通報者保護法」施行(平成18年4月1日)より前に行った通報
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「公益通報者保護法」で守られる通報者の権利とは

公益通報者保護法は、通報を理由に不利益を被ることがないよう通報者を保護しています。

■公益通報者保護法で守られる不利益な扱いの禁止

通報者が受ける次のような不利益な扱いは、法律で禁止されています。

・通報を理由とした解雇や契約解除、解任
・通報を理由とした降格、減給、自宅待機命令、退職者への退職金不支給
・事業者が通報者へ損害賠償を請求すること

■内部通達制度の導入

従業員数が300人を超える企業には、内部通報制度の導入が義務付けられています。同時に、事業者の内部通達担当者には守秘義務が課され、違反した場合は30万円の罰金が課されます。

事業所の不正・違法行為を通報する前の注意事項

公益通報者保護法による保護を受けるためには、次のような注意点があります。

■不正な利益の取得を主目的としていない

公益通報は「不正な利益の取得を目的としていないこと」が前提です。通報を手段に見返りを得る、対象事業者の社会的信頼を失墜させるといった不正な利益を得ることが主目的になっている通報は、公益通報に該当しません。

■他人の正当な権利を尊重する

通報する内容には、第三者の個人情報や事業者の機密情報、国の安全に関わる情報が含まれている可能性があります。そのため、通報に際しては他者の正当な利益や公共の利益を害することのない振る舞いが求められます。

■裁判での立証のために根拠を集めておく

公益通報者保護法に反していると判断された場合、通報者自ら行政や裁判所に出向き、解決を図ることになります。仮に裁判所の起訴手続きで真偽不明となると、求める保護を受けることはできません。主張する事実を裏付ける根拠を集めておくことが大切です。

公益通報は、事業者の不正や違法行為を発見し、公共の利益と企業の信頼を守るには欠かせません。しかし、通報者として保護を受けるための要件が厳格に定められています。事業所での不正や違法行為を万が一目撃してしまったときには、行政機関や外部機関への通報に比べて通報者を保護する要件がやさしい、内部通報窓口への通報を検討してみましょう。自分の身を守るためにもSNSでの告発は避け、しかるべき機関に相談してください。